二重世界
「そんな人がいたの……?」


佐和子は詩織の手を握り、声を掛けた。


「詩織ちゃん……。おばさんよ。わかる?ほんの少ししか会ってないけど、おばさんね、詩織ちゃんの事大好きよ。だから戻って来て。また私を悲しませないで……」


(おばさん、やっぱりおばさんも……)


「おい!戻って来いよ!お前、またそっちに行っちまう気かよ!?」


「詩織!あれ……夢じゃなかったんでしょ?本当にあんた、あたしを救ってくれたんでしょ!?ずっと一緒にいるって言ったじゃない!」


3人が一斉に声をかけた時、ほんの一瞬だけ、詩織の体がピクッと動き、また元の状態に戻った。


「今、こいつ動いたよな!?おい、もう1回動け!」


3人は必死に呼び掛けを続ける。


「三輪、おばさん、ちょっとだけ外してくれねえか?」


「藤堂、どうして!?」


「俺さ、こいつに伝えたい事があるんだ。少しだけでいいからよ。頼む……」


「亮ちゃん……。わかった。私はちょっと出るわ」


「あ……じゃあ、あたしも。少しだけだからね」


「ああ。サンキュ」
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