二重世界
佐和子と香織が病室を出た後、亮二は詩織の手を握り締めた。


「聞こえるか、片瀬?いや………ヒロミ」


その頃、片瀬詩織、いや、藤瀬ヒロミは…………




「私、どこにいるんだろう……」


私が目覚めた時、私は大きな扉の前に立っていた。


「え……と、この扉を開ければいいのかな……」


私は目の前にある扉を開けようと、手を伸ばした。


(ダメだヒロミ。まだその扉を開けるのは早い)


「この声……。冥界の道で何度か聞こえた、とても優しい声。でも、どこかで聞いた声のような気がする……」


そう思いながらも、ヒロミの手はゆっくり扉へと伸びる。


「手が止まらない……。向こうに行った方が良いのかな?」


(詩織ちゃん、わかる?おばさんよ)


「え?……お母さん?どうしてお母さんの声がするの?」


(戻って来いよ!)


「亮ちゃん?」


(一緒にいるって言ったじゃない!)


「香織……?皆、どうしたの?なんで皆の声がするの?」
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