二重世界
ピコーン……ピコーン……ピコーン…ピコーン…ピコーン…


「心電図の音が早くなってる……。ヒロミ!おい、ヒロミ!」


亮二の握る手に力が入る。しばらくすると、亮二は自分の手が詩織に握り返される力を感じた。


「ヒロミ!」


亮二は詩織の顔を凝視する。
そして……


「ヒロミって誰の事?………‘亮ちゃん'」


詩織は目を開け、亮二に向かって少し微笑んだ。


「戻って来たんだな!良かった……」


「ありがとう。あなたのおかげで返って来られたわ。……ありがとう」


詩織は再び目を瞑る。


「ヒロミ!おい、ヒロミ!……心電図は安定してる」


この後、亮二は医師を呼び、佐和子と香織も病室に入った。


「どうやら峠は越えたようです。この子はよく頑張った。それに、あなた達がいなければ、助からなかったかもしれない。とはいえ意識がいつ戻るかはわかりません。しばらくはこのまま様子を見ましょう」

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