二重世界

亮二は、夜中も詩織の傍にいる事に、主治医の了解を得た。
佐和子は家に戻り、香織と亮二が病室に残る。


「三輪、お前疲れてるだろ？帰って寝てからまた来いよ」


「うん。でも……。ねえ藤堂？」


「ん？」


「なんかさあ、詩織、最近雰囲気変わった？」


香織はゴールデンウィーク前と後で、詩織の雰囲気が変わった事を亮二に尋ねてみる。


「そ、そうか？別に俺はわからねえけど」


「じゃあ何であんた、いきなり詩織に優しくなるのよ。それまでは別にそんなに親しくなかったじゃない。あの……幼馴染みのコと関係あるの？さっきの人、幼馴染みのコのお母さんなんでしょ？」


香織は振って良い話題なのかわからず、遠慮気味に亮二に聞いた。


「ヒロミは関係ねえよ！」


「ご、ごめん！……たださ、詩織の事はあたしが全部わかってるつもりだったから……。あたしの知らない詩織がいるのかな、て」