二重世界
(新しい‘住人'の発見は緊急事態と言える。しかし私の専門は殺しではないからな)


「なんか喋りやがれ!このやろう!」


亮二が更に力を込め、帽子を殴った。


「ぐふっ!」


(なんだ……、私の体にダメージ!?こいつ!)


帽子は亮二の目を見て驚愕した。さきほどまで普通の黒目だったのが、今は赤く光っているからだ。


(攻撃強化能力?それともアオのような、イメージの具現化か!?)


「効いた!?ならもう一発!」


亮二が拳を振りかぶったとき、深く被った帽子の中から、白い目が姿を現した。

そして、亮二の右手から顔を掴んでいた感触が消え、体が不安定に揺れる。周りは、真っ白以外は何もない世界。


「な、なんだここ!?病室じゃねえ!体がフワフワして、地面が……。お、俺は上向いてんのか?それとも下?」


(やはり緊急事態には早急に対応すべきだな。私の2次世界で始末してやろう)
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