二重世界
アオが詩織の寝ているベッドに腰掛け、詩織の頬を触る。


「詩織は僕達とも何か違う。不思議なコだ。正確には、詩織の中にいる、外見とは別人格の君……」


「知ってるのか、ヒロミの事を!?」


「ふ~ん……。知ってるさ。彼女は僕のものだ。そうだろ、ヒロミ……」


アオが詩織の顔に自分の顔を近付ける。
そして唇を……


「やめろ!!」


アオと詩織の唇が重なる直前、亮二がアオの肩を掴んだ。


「君はヒロミの事が好きなのかい?……ん?」


アオはふとベッドに落ちている紙切れを見つけ、手に取り、書いてある文字を読んだ。


「見んな!」


サッと亮二が紙切れを拾い、小さく折り畳んだ。
そしてそれをお守りの中にしまい込む。


「そういう事か。しかしヒロミに相応しいのは僕だよ。僕しか彼女を守れない。そう思わないかい‘亮ちゃん'?」


亮二に向かって微笑むアオの顔は、いつもの無邪気な笑みではなかった。
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