二重世界
「う……」


亮二はアオの目を見て、背中に冷たいものを感じた。
その目はまるで蛇のような、無感情で何を考えているのかわからない瞳。

その目を見ていると、自分があたかも獲物のような感覚を植え付けられる。アオはその目のまま、詩織に顔を向けた。


「テメエ、ヒロミから離れろ！」


亮二はアオの体を押し退け、詩織を守るように間に割って入った。

亮二には、詩織の事を守ると言ったアオが、捕食でもするのではないかと感じられたのだ。


「テメエ……、何を企んでやがる」


「企むなんて、人聞きの悪い事を言うなよ‘亮ちゃん'」


クルッと振り向き、そう言ったアオの目は通常時の青い瞳に戻っていた。
そしてアオは無邪気に笑う。


「馴れ馴れしく呼ぶんじゃねえよ」


「ま、いっか。ヒロミをしっかり見ててくれよ亮ちゃん」


アオは病室の壁をすり抜け、その場から消え去った。


「ヒロミって言うのか。……彼女を見ていると疼いて仕方ないな。なぜこんな感情が生まれたんだろう？過去で会った時は純粋に守りたい気持ちだったんだが……。わからない。これが僕なのか？」


アオの目は再び変化していた。


「あいつらには渡さない。ヒロミは僕の………餌なんだから！」
< 200 / 265 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop