二重世界
私はあれから3日後に退院し、1週間ほど何事もなく普通に暮らしている。

‘あの男'は、電車の中で現れて以来、私の夢には侵入してきていない。
私の能力を警戒しているのか、それとも他に理由があるのか。

今日はこれから亮ちゃんが来る。
退院してから毎日香織が私の家に来てくれて、色々と世話を焼いてくれていた。

能力の反動だから、体調的には万全なのだが、そんな事は香織にはわからないし、言えない。

だから香織は、私が無理をしないように心配してくれているのだ。


ピンポーン


「亮ちゃんかな」


つまり、私は病院で亮ちゃんに会って以来、学校では顔を会わせるものの、プライベートでは会っていないのだ。


「香織も安心して、今日は家に帰るって言ってたし。久しぶりに亮ちゃんとゆっくり話せるかな」


いつヤツらが来るかわからない緊迫した状況で、受かれてはいけないけど……でもね。
嬉しいものは嬉しいから。


「亮ちゃ……、え!?」
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