二重世界
「誰かいたの?……ヤツら?」


私は途端に警戒心が強まり、少し小声で訊ねた。


「ん?違う違う。多分君の味方だよ」


「私の味方?……亮ちゃんかしら」


「亮ちゃん?ああ、君の恋人の事?違うよ」


「ここ、恋人じゃないわよ!」


「ふ~ん、そうなんだ……」


私の真っ赤な顔を見て、アオはニヤニヤしながらそう言うと、立ち上がり歩き出した。


「どこ行くの?」


「君の部屋」


「ちょ、ちょっと!ここじゃダメなの?」


私の焦りを意に介さず、アオは2階に上がっていく。いくつか部屋の中から、アオはしっかり私の部屋に入り、ボフッとベッドに座り込んだ。


「うん、やっぱりこっちの方がヒロミの匂いがする」


アオが笑顔で、部屋の外にいる私の方を見る。


「そういえば、何でその名前を知ってるの?」


「君の事は何でも知ってるよ。……味以外はね」


味?
そう言って、私の顔を、いや体をじっと見るアオの視線に気付いた私は、咄嗟にしゃがみ込み、胸を両手で隠した。
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