二重世界
あの青い目に、私の体を見透かされているような気がしたからだ。


「はは、別に透けて見えたりしないよ。相変わらず良い反応するなあ」


「う……、じゃあそんなに見ないでくれる……?」


考えてみれば、私はアオの事を何も知らない。
どう見ても20歳前後の若さで殺し屋なんてどうして?
今はどこに住んでるの?
家族は?

いくら助けてくれたとは言え、得体の知れない男の人を部屋に入れるのは浅はかだったのではないか。

申し訳ないけど、心の声を聞いてみようかしら。

そんな事を考えていると、アオが私に喋りかけた。


「そんなに警戒しないでよ。僕にはヒロミしかいないんだから……」


アオは変わらず笑顔のままだった。
しかし私には、その表情がどこか物憂げな、悲しそうな表情に見えた。
いや、表情というよりは、その瞳が。

その寂しさ、悲しさは一瞬にして私に伝わった。

だって私も同じ孤独を味わった事があるから。
片瀬詩織として生き返った時に……。
唯一の肉親が他人に、愛する人がただのクラスメートになったあの時。
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