二重世界
「ただ、君に会いたかった……」


「アオ……」


またこの目だ。
寂しさを含んだ瞳。
アオは黙って私を見つめている。私も、アオの顔から目を逸らせないでいた。

ベッドについていた私の右手にアオの左手が重なり、そして彼の右手が、私の頬にそっと触れる。


冷たい。


もうだいぶ暖かい季節なのに、彼の手はなんて冷たいんだろう。彼の冷えきった心が、全身を覆っているようだ。


そしてアオは、静かに私を押し倒した。私はされるがままに体をベッドに預ける。


ダメだ。


このまま、なしくずし的に私の体を許しては。

アオの両手は、私の両手と重なっている。そしてそのまま彼の手が私の手を握り締めた。


徐々に近付いてくる、アオの顔。


「だ、ダメ……だよ」


いけない。アオの唇を許してしまったら、多分私は……


‘僕を受け入れてくれるのは、この世でヒロミしかいないんだ'
< 214 / 265 >

この作品をシェア

pagetop