二重世界
私達はしばらく唇を重ねていた。
アオの想いが、私の中に流れてくる。

彼は、今まで何人もの人を殺めてきたんだ。
そしてその度に、彼の心は孤独を増していった。
そのうち彼は、人を殺める事に対して何の感情も持たなくなった。


本当は悲しかったのね。
嫌だったのね。


でも任務を遂行すれば、誉めてもらえた。仲間が笑いかけてくれた。
彼らの歪んだ笑みさえも、あなたにとっては必要なものだったんだね……。

そして彼らはアオの心を利用して、アオの能力を利用するだけ利用して、いらなくなったら消そうとしたんだ。


なんて可哀想な人……


私はアオの心を包み込むように、アオの体を強く抱き締めた。

それまでは、アオの行為に流されるままに受動的な態度を取っていた私が、自らアオを抱き締めたのだ。

アオの舌が、私の舌に絡み付く。


「んんっ!……んっ」
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