二重世界
ガラッと教室のドアが開く。


「お、来たな我が校サッカー部のエースが!」


「うっせえよ南」


南くんの冷やかしを軽くいなした亮ちゃんは、チラッと私の首筋を見て、目も合わさずに席に座る。

退院した日から、亮ちゃんが教室に入ると、目で‘おはよう'の挨拶をしてくれていたが、今日はそれがない。


「昨日の仕打ちを考えれば当然か。でも、ちゃんと話さないとな」


私が溜め息をついていると、香織が背中をつついてきた。


「ん、何?」


「ねえ、もしかしてあんたら昨日、ついに?」


「は……?何の事………ち、違うわよ!」


香織がニヤニヤしながら、私の首筋のバンドエイドを見ている視線に気付き、私は必死に否定した。


「そのバンドエイド。怪しいぞ~」


「これは……、引っ掻いて血が出たから……!」


「吸われて跡がついちゃったの間違いじゃない?」


せ、正解……。
私は顔を真っ赤にして、言葉を失ってしまった。
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