二重世界
「そっかあ、良かったね詩織」


「ち、違うの、本当に……」


「藤堂、絶対詩織の事好きだもんね。朝から夜中まで24時間体制で看病するなんて、普通じゃ出来ないわよ」


そう。
亮ちゃんは私の入院中、学校を休んで私の傍にいてくれた。

もしかしたら私と亮ちゃんは両想いなのかなあ、て少し思ったりして。


でも、私はそんな献身的な亮ちゃんを裏切ったんだ。
ぶっきらぼうで、クールで、でも心は誰よりも温かい亮ちゃんの心を、私は踏みにじった。


「香織、私達ね、そんなんじゃないんだ」


「はあ?何今更……」


「後で話すね」


「詩織……、わかった」


私の陰りのある表情に気付いたのか、香織はそれ以降はその話題を出してこなかった。

ホームルームの時間が来て、教室のドアが開く。


担任の若井先生……ではなく、教頭先生?


「号令はいいぞ。実はな、若井先生は体調を崩されて、しばらくお休みする事になった。その間、臨時の担任の先生がお前らを受け持つから。さあ、沢崎先生」
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