二重世界
「マジ……?詩織が知らない世界に行っちゃう。でも、そんな人いたんだ」


「最近、こっちに戻ってきたの」


「ねえ、もし藤堂が来なかったらさ、最後まで……?」


「し……、しちゃってたかも」


「詩織、いつからそんな女の子になったのよ~。あたし、悲しい!」


「そ、そんなんじゃないよ!なんか、あれよあれよという間に……」


言ってて、思い出して恥ずかしくなってきた。
自分から抱き締めたりするなんて。
またああいう雰囲気になったら、私は体を許してしまうのだろうか。
アオは、ああいう事がしたいの?


「でもさ、なんかちょっと違う気がするな、あたし」


少し間をおいて、香織が屋上の柵にもたれながら言った。


「え、何が?」


「詩織は優しいからさ、その人に同情してるだけなんじゃない?それってどうなのかなあ。詩織の気持ちはどこなの?詩織は本当に藤堂よりその人の方が好きなの?」
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