二重世界
「……わかんない。私ね、自分がその人を好きなのか正直わからないの。私なんかより遥かに厳しい状況でも、1人で頑張ってる強い人なんだけど……ふとした事で消えてしまいそうな側面があって、傍にいてあげなきゃ、て思って……」


香織の言うとおり、自信を持って好きだと言えるのは亮ちゃんの方。
でも、放っておけない、とか傍にいてあげたい、ていうのは‘好き'とは違うの?

もしかしたら‘好き'よりも大きな感情なんじゃないかな、て思った。


「ふうん。つまり、あんたとその人は似た者同士なのね」


「そんな事ないよ。私、強くないし」


「同じ。詩織の場合は、他人に迷惑かけまいと何でも1人で抱え込むし。泣き虫のくせにね~。だからあたし、守りたいって思っちゃうんだ」


「じゃあ……、じゃあさ、私が男だったら香織は私の事好きになる?」


「う~ん、どうかなあ。気にはなると思うけど……。好きにはならないかもね。弟感覚?」


弟感覚……。
もしかしたら私の場合も‘男性'に向ける愛情ではなく、ただ‘人'に向ける愛情なのかもしれない。
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