二重世界
「ヒロミの、お友達かしら?」


「え…?」


私は一瞬、頭が真っ白になった。


お友達?



……オトモダチ!?



違うよ!
私はヒロミなんだよ、お母さん!



「泥だらけで大丈夫?」



気付くと、私は涙を流して走り去っていた。


「あ、ちょっと…!」


そうだよね。気付くはずないよね。


「せっかくお母さんと話せる機会だったのに、私のバカ!でも……、今は無理!」


しばらく走ると、私は片瀬詩織の家に着いた。元の私の家から徒歩5分くらいの場所。


「こんなに近いなんて。学校に行くとき、毎日私の家を通るの……。真実を話せないなんて辛いよ。残酷だよ!」


私は家に入ると同時に泣き崩れた。大声を出して、泥だらけの体を震わせて。


「長い時間をかけて、勇気を出して、幸せな未来を捨てて生き返ったのに!もう一生あの人を‘お母さん'て呼べないの!?ずっと他人のままでいなくちゃいけないの!?」
< 24 / 265 >

この作品をシェア

pagetop