二重世界
ガラッ!


「あ、そうだ先生」


「な、なんだ?……藤堂、まだいたのか」


(亮ちゃん!)


「なんかよお、俺の後輩がさっき職員室にいてさ。片瀬が倒れたって聞いたけど、大丈夫か?先生が運んだんだろ?……ここに」


「……ああ。ベッドで寝てるから心配ない。留守番ついでに見ておくから、お前は部活に行ってこい」


(亮ちゃん、お願い!一緒にいて!……でも、昨日の事があるから)


「ふうん。さっき忘れてたんだけどさ、俺、葵ちゃんにテーピングしてもらわなきゃいけねえんだ。俺が留守番してるから、先生は戻ってていいよ」


「そうか?……それなら任せたぞ」


沢崎は私のベッドに顔を出し、薄ら笑いを浮かべる。


「片瀬、藤堂がいてくれるそうだから私は行くぞ。またじっくりと相談に乗ってやるからな、ふふ……」


「な、何が相談よ……。あ、体が動く。声も……」
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