二重世界
とても優しく、温かい声。

聞いた事のある声。
正しく言えば、冥界の道の時は聞いた記憶がなかった。

つまり、片瀬詩織の記憶の中の声のはず。


‘ヒロミ、目的を忘れるな'


そう言ってた。
あの声は、私が‘あの男'を裁く事を願っている?


「私が片瀬詩織になってから‘あの男'が私の夢に現れたのは、電車の夢だけ」


‘こいつは……藤瀬ヒロミか!?'


「………え?」



‘ヒロミ、目的を忘れるな'
‘こいつは……藤瀬ヒロミか!?'



「同じ声……?」


あまりにも雰囲気が違いすぎて、私は気付かなかった。
確かにあの2つの声は、同じなのだ。


「二重人格……?」


そうなのかはわからない。しかし、同じ体に人格が2つあると考えれば辻褄が合う。


「私は温和なお父さんの娘で、片瀬詩織は‘あの男'の時のお父さんの娘……?」
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