二重世界
「ちきしょう、あのお守りを投げ捨てて以来、ちょこちょこケガするな。戻って探してみようかな……。まあ、もうねえか」


亮二は部員の誰よりも早く学校に着き、着替えを終えグラウンドに出た。

準備運動をして、軽くランニングをする。


「いつもならもう何人か来てる時間なのに、まだ誰も来ねえ。ったく、たるんでやがるな」


亮二はランニングを終えると、しばらくサッカーボールと戯れ、シュート練習に入るため、ボールをセットした。しかしふとそこで、異変に気付く。


「ん?……なんかいつもより、距離があるような気がするな」


そう思った瞬間、亮二は自分に向けられた恐ろしく攻撃的なオーラを感じた。


それは、殺意……!


「誰だ!!」


辺りを見回すが、誰の姿も見えない。しかしその殺意は、徐々に亮二に近付いてくる。


「ヤツらか……!?沢崎?」


警戒する亮二に、近付く人影。


「亮二、相変わらず早いな」


「部長!」


近付いてきたのは、サッカー部の部長であり、レギュラーメンバーのキャプテンでもある須原 令(すはら れい)だった。
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