二重世界
――サッカー部グラウンド


体を貫かれ、瀕死の重傷を負った亮二の命は、まさに風前の灯であった。


「さて、次は藤瀬ヒロミの始末を命じて欲しいものだ」


須原はそう言って、亮二を貫いて血にまみれた右手を舐めまわした。


「ヒロミの始末…だと……?」


「ほう、動けるか。傷自体は致命傷とまではいかなかったか。しかし、出血多量でじき死ぬ」


亮二は、自らの手を傷口に突っ込んだ。


「あぐぁっ!」


「狂ったか、藤堂亮二?」


すると、ジュッという肉が焼ける音がして、亮二の出血が止まった。
そして亮二は膝に力を込め、グググ…と起き上がる。


‘君にヒロミは守れない'


「うるせえ……。俺がヒロミを守るんだよ!」


「まさか……、溶接して傷口を塞いだのか!?」


「オラァ!!」


ガッ、と亮二が須原を殴り飛ばす。後ろに数メートル吹っ飛ぶ須原。


「ふふ、藤堂亮二よ。この体を傷付けていいのかな?」


「なんだと……?」
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