二重世界
すると、須原が浮かべていた歪んだ笑みがフッと消え、怯えた顔付きが現れる。


「りょ、亮二……、どうなってんだよ、俺の体……」


「え?部長?」


須原は右手で、自分の左手小指をグッと掴んだ。


「や、やめろ!俺の体が、勝手に……」


ボキッ!
と、須原の小指がへし折られた。須原は叫び声を上げ、痛みに悶絶する。


「ぶ、部長!くそっ!!」


駆け寄る亮二の傷口目掛け放たれた、須原の蹴りが突き刺さる。


「ぐあっ!がっ……!」


一転して、今度は亮二が悶絶する。須原は起き上がり、更に亮二の傷口を何度も踏みつける。


「くっくっく。そうだ、良い事を思い付いたぞ。貴様の体に取り入り、藤瀬ヒロミに近付いて始末してやろう。最高のショーが拝めるぜ!」


ガシッ!


「ぬぐっ!な、なんだ!?」


高笑いする須原の顔を、今の今まで悶絶していた亮二が鷲掴みにしたのだ。
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