二重世界
普段臆病な私だが、落ち着いて決断を入れると途端に頭が回転し出す。


「あの男は、夢の中で人を殺せる、てメイフが言ってた。だったら多分あいつは夢の中以外では人を殺さないはず。夢の中なら証拠が残らないから。顔もわからないし声もわからない。だから私があいつに接近出来るのは夢の中だけ……!」


私は更に考えを浮かべる。


「…と、あいつも思うはずだわ。あいつは私が心の声を聞いた事を知らないはず。声色をしっかり聞いた。そして藤瀬ヒロミの名前も知っていた。だからきっと現実でも近くで監視していたんだわ」


そして、考えは終局に入る。


「夢の中で私を殺せないと判断したあいつは、予知みたいな力で現実に起こる事を夢で先に見せた。そして私の精神的な崩壊を狙ったのね。あいつは近くにいる……」


私は生き返った意味を再確認するように決意した。


「夢の世界で私を追い詰めている間に、私は現実世界でお前を追い詰めてやる!絶対に辿り着いてみせる!」


親子の関係を断たれた私に、残された生きる意味。

それは、あの男をこの手で裁く事――。
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