二重世界
「あ、ごめんね!そうだったの…。でもウチは娘がいなくなっちゃったから……。良かったらいつでもいらっしゃいね」


「はい、ありがとうございます!」


私は笑顔でお辞儀をした。


「で、朝ご飯食べてくわよね?」


「え……でも、良いんですか?」


普通なら遠慮すべき所なのかもしれない。でも、またお母さんの料理が食べられるし、またこの家に入りたい。

そんな想いが、ついつい前に出てしまう。


「いいのよ!私も娘がいるみたいで嬉しいわ」


私はそのまま藤瀬家にお邪魔した。‘お邪魔する'なんて妙な気分だ。

私は自分の遺影と向き合い、線香を上げた。

そして、もう何年も待ち望んだような、お母さんの料理。


「遠慮なく食べてね。私一人だと余っちゃうから」


「はい……。とても嬉しい…」


私は少し涙目になっていたが、気付かれまいと下を向いた。
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