二重世界
つい本音が漏れそうになる。言いたい。‘ヒロミ'って呼んで欲しい……!


「私、本当はね……」


私は感情が高まり、言葉を出した。


死神の鎌が、首に突きつけられている事も知らずに。


「うん?本当はどうしたの?」


優しい笑顔。
いつものお母さんだ……。


「本当は……!」


シーン…とした空気。お母さんは次の私の言葉を待っている。




「一人が、寂しかったんです……」




言えない。
言ったら冥界に送られちゃうもの。

家族じゃなくなっちゃったけど、またお母さんに会えたんだから。


「ごちそうさまでした。とっても美味しかった。また、来ても良いですか?」


この言葉を聞いて、お母さんは嬉しそうに笑う。


「毎日でも歓迎よ。なんだかヒロミといるようだったわ」


お母さん……。
私、頑張るよ。お母さんを悲しませた張本人を、必ず突き止めてみせるからね。


あなたにとっては他人でも、私にとってはたった一人の家族だから。
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