二重世界
真実の束縛
私は一度家に戻り、支度を整え学校へ向かった。
学校へは電車で7駅。

電車は久し振りに味わう満員電車。朝から体力を使うわ……。

私がうんざりしていると、お尻のあたりに何かモゾモゾとした感触を受けた。


(やだ、痴漢!?…でも、もしかしたら鞄とかが当たってるだけかも)


そんな甘い考えをしていると、それはスカートの中まで伸びてくる。


(あ、ちょっ…!痴漢だ!叫ばなきゃ…)


私はスーッと息を吸い込む。


(叫ばなきゃ……!でも、恥ずかしい……)


‘いいね、叫びたくても声を出せない姿がそそるねえ'


(え?頭に直接響いてくるこの声は……心の声!?こいつ、最低ね!せめて他の人にも聞こえれば良いのに!)





「これだから、おとなしそうな女子高生の痴漢はやめられんなあ」





周りの乗客が、一斉に痴漢男の方を振り向く。


「……へ?」


さっきの声は心の声じゃない。痴漢男がはっきりと言葉に出したのだ。

隣にいた男性が、私のお尻を触っていた手を掴まえる。


「痴漢め!駅員さんに引き渡してやる!…君、大丈夫だったかい?」
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