二重世界
私はこの後、激しい眠気と格闘しながら、なんとか全ての授業を乗りきった。


「づがれだ~」


いけない。このまま机で眠りそうだから、早く帰ろう。


「詩織、お茶してかない?」


授業が終わりウキウキ顔の香織が、誘いをかけてきた。


「ごめん、今日は帰るよ」


「ええ~、つれないじゃない。まあ仕方ない。痴漢に気をつけてね」


その瞬間身の危険を感じた私は、両手で胸を抑え机にうずくまった。


「あ、こいつ!勘が鋭くなって~」


香織は構わず後ろから抱きついてきた。


「香織の行動はお見通しよ!……て、いつまで抱きついてんのよ~!」


「詩織が諦めるまで。アハッ!」


アハッ、じゃな~い!


結局10分ほどじゃれられて、ようやく解放された私は、フラフラと帰りの電車に乗った。

電車で座れた私は、ここぞとばかりに眠りにつく。

< 43 / 265 >

この作品をシェア

pagetop