二重世界
ん……。


あれ?
大きな交差点?
ここは……


「きゃっ!」


私がこの場所について考えを巡らせていると、後ろからドンと誰かが当たった。

その人は、私に当たった事に気付いてもいないかのように、フラフラと交差点を渡ろうとする。


「危ない!まだ赤よ!」


私は必死にその人の肩を掴まえた。そして顔を見て凍りつく。


「あなたは……、私!?」


目に写ったのは、藤瀬ヒロミとしての私だったのだ。


「じゃあ今の私の目線は、片瀬詩織のもの!?」


ヒロミは視線が定まらず、私の制止など構わず前に進もうとしている。

そのとき、私はヒロミにしがみつきながら、耳元で何か囁いた。


何を?
自分でもわからない。


次の瞬間、ヒロミは突然走り出した。


そして……



「私が……、跳ねられた……。体が変な方向に曲がってる。嫌、目を逸らして!お願いだから、目を逸らしてよ!」
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