二重世界
私の目線はヒロミから全く離れない。周りの車は停車し、騒ぎが大きくなる。

すると、一人の男性がヒロミに走り寄り、体を揺さぶった。


「亮ちゃん!あのときも、私を探しに来てくれてたの……?」


私が悪夢に悩まされて半年程経った時、私の様子を心配した亮ちゃんは学校が終わるといつも都学園に迎えに来てくれた。

休みの日も、部活が終われば家に顔を出していた。端から見れば、私達は恋人のようだっただろう。


でも不可解なのは、片瀬詩織の存在。彼女がこの場にいたのは偶然?
それに、一体何を囁いたの?




「……ろよ。おい、起きろって!」


「ふぇ…?あ!亮ちゃん!!」


「あ?なんでテメエに…、あ、ヤバい!出るぞ!」


亮ちゃんは私の手を掴み、電車の出口へと走り出した。


「お前もこの駅だろ?降りるの」


亮ちゃんはしゃべりながら、私の手をパッと離す。


「あ……うん。ありがとう」

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