二重世界
「くっ…!片瀬お前、5月3日、何してた?」


5月3日……。
藤瀬ヒロミがこの世を去った日だ。


「え?いきなり言われても……」


記憶がないから思い出しようもない。


いや……。
さっきの夢が現実なら、片瀬詩織は5月3日、あの場所に?


「なんだよ、なんで黙ってんだよ?」


まさか亮ちゃんも気付いてたの?
やっぱりあれは現実?


「ち、違うの!あれは私じゃなくて……」


「お前だよ!!」


亮ちゃんが怒りに震えた声で叫び、私はビクンッと体を強張らせた。

やっぱり亮ちゃんは見てたんだ。片瀬詩織の事を。そしてあれは現実なんだ。


(でも違うの!
今の私はヒロミなのよ!
あなたの事が大好きな、ヒロミなの!)


言葉に出して言いたい。
でも言えないんだよ……。


「今日はそれを確認したかったんだ。俺はお前を、許さない……!」


「そんな!どうして!?私は……、私はヒロ……」

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