二重世界
つい真実を叫びそうになったとき、胸の奥に激痛が走った。そして不意に自分の足元を見て、私はゾッとした。


足が……消えかかっている！


言ったらダメだ！
言ったら私の存在が消えちゃう！


「もう2度と話しかけるな！」


亮ちゃんはそのまま足早に去って行ってしまった。


私はその場に崩れるように座り込み、ポロポロと涙を流した。


「どうして……？私は亮ちゃんの事が大好きなのに！なんで好きな人に憎まれなきゃいけないの！！」


しばらくその場を動く気力がなかった。たった一人の肉親も、愛する人も、私の元から離れていく。


「私、生き返らない方が良かったのかな……？こんなの、死ぬより辛いよ……」


私、生き返ってから泣いてばかりだ。藤瀬ヒロミだった頃に流した涙の量を、すぐに追い越しちゃうかもしれない。





「くそっ！あいつは間違いなくヒロミを死に追いやった憎い女なのに……！なんで一瞬あいつがヒロミに見えたんだ！！
ヒロミ、あいつを憎んだらダメなのか……？」





亮ちゃんの中に葛藤が生まれている事は、今の私には知る由もなかった。

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表紙・目次

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