二重世界
二重世界
――警視庁・刑事部捜査第一課
「先日武蔵線で捕まった痴漢の発言、どう思いますか?」
特殊捜査班の牧野 忠(まきの ただし)が話を振る。相手は上司である坪倉 義人(つぼくら よしと)。
「心の声が知らず知らずのウチに言葉に出た、なんて間抜けな話はないだろう。つまり、こいつは本心を言わされたんだ」
特殊捜査班の中でも、この二人は特別だ。その活躍は日本の枠にとどまらず、世界の警察と手を組み特に難解な‘特殊事件'を解決してきた。
「言わせた相手は片瀬詩織。あの藤瀬ヒロミの事故現場に居合わせた女子高生ですね」
「ああ。あいつには何かある」
坪倉は、藤瀬ヒロミの事故資料をバサッと机に置いた。
「片瀬詩織は、赤信号を飛び出そうとした藤瀬ヒロミの肩を掴み、そのまま耳元で何かを囁いた後、藤瀬ヒロミは突如赤信号の交差点を飛び出し、トラックに跳ねられた、と言う事ですが。正解には‘耳元で囁いたように見えた'だけで、真実はわかっていません」
「先日武蔵線で捕まった痴漢の発言、どう思いますか?」
特殊捜査班の牧野 忠(まきの ただし)が話を振る。相手は上司である坪倉 義人(つぼくら よしと)。
「心の声が知らず知らずのウチに言葉に出た、なんて間抜けな話はないだろう。つまり、こいつは本心を言わされたんだ」
特殊捜査班の中でも、この二人は特別だ。その活躍は日本の枠にとどまらず、世界の警察と手を組み特に難解な‘特殊事件'を解決してきた。
「言わせた相手は片瀬詩織。あの藤瀬ヒロミの事故現場に居合わせた女子高生ですね」
「ああ。あいつには何かある」
坪倉は、藤瀬ヒロミの事故資料をバサッと机に置いた。
「片瀬詩織は、赤信号を飛び出そうとした藤瀬ヒロミの肩を掴み、そのまま耳元で何かを囁いた後、藤瀬ヒロミは突如赤信号の交差点を飛び出し、トラックに跳ねられた、と言う事ですが。正解には‘耳元で囁いたように見えた'だけで、真実はわかっていません」