二重世界
「もうダメだ。集中力の限界」


そういえば私は、もの凄く疲れていたんだ。能力を使ったし、亮ちゃんとの事だって。

このまま寝たらまた‘あの男'が来るだろうか。
怖いけど、これはチャンス。


でもさっき電車の中で見た夢、今までと違った。
‘あの男'が見せてきたのは未来の現実。
でもさっきの夢は過去の現実。


「それもあいつの能力?それとも私の能力?」


もうわからない……。






(………ん?
なんか暗い。いつの間にか寝ちゃったんだ。

どこだろうここ。


あれ?
私、歩いてる……!
自然に体が動いてるようなこの感覚は、さっきの夢と同じ!


じゃあこれは過去の現実?
片瀬詩織の、空白の時間……!?)


私の視線は斜め下を向いたまま動かない。
まるで意志のない、操り人形のように。


「来たか片瀬詩織」


男の声。
忘れない……。
‘あの男'の声だ!

男は建物の中に私を招き入れ、ドアを閉めた。
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