二重世界
ジャンプの頂点まで上昇した私達は、そのまますごいスピードで下降し始めたのだ。


「ジェットコースターよりスリルあるだろ?」


「無理!嫌ぁぁああ!!」


ちなみに私は、ジェットコースターが大の苦手である。

地面に着く直前、体がフワリと舞い、彼は静かに着地した。


「ここまでくれば大丈夫。すぐに大通りだ。タクシー捕まえ放題」


彼は無邪気な笑みを浮かべながら、私を地面に優しくおろす。

私はというと、抱っこされたままの格好で寝転がってしまっている。
我ながら情けない姿だ。


「あれ?もしかして腰抜かしてる?」


「は、はい。さっきより重症かも……」


「仕方ないなあ。特別大サービスで、君の家まで送ってあげよう」


彼は私に顔を近付け、私の顎を軽く持ち上げた。


「そのかわり、君を堪能させてもらうけど……」
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