二重世界
飛び去るアオを見ながら、私は‘あの男'の顔が何度も頭をよぎった。


私は、あの人の顔を知っている。実物を見たことはないが、写真では何度も見た。写真で見たのとあまり変わってない。




「お父さん……なの……?」




あの顔は間違いなく、写真で見たお父さんだった。私……藤瀬ヒロミ……の、お父さんだったのだ。


「お父さん、私が生まれてすぐに亡くなったって聞いたのに!
私を殺そうとしたのはお父さんなの!?
どうして!?
元々が暗殺を生業としてた事、お母さんは知ってたの……!?」


他人の空似であって欲しい。あれが本物のお父さんであって欲しくない。私はすがるような気持ちで、そう願っていた。


だってそうじゃないと、折角生き返った私の心が、また壊れてしまいそうだったから……。

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