二重世界
5分程歩いて、私の心臓の鼓動が高まる。


「いた……!」


私が何食わぬ顔をしていると、庭で水をまいているあの人が話しかけてきてくれた。


「おはよう、詩織ちゃん、今日も早起きね」


お母さんだ。
二度寝せずに起きてたのは、偶然を装ってお母さんに会える事を期待していたから。


「おはようございます、……おばさん」


なんとなく、自分の笑顔がぎこちないんじゃないかと思う。


「ちょうど良かったわ。これから朝食作るのよ。上がってって」


「え、そんな!昨日もご馳走になったのに……」


「毎日でも良いって言ったでしょ?」


「あ、じゃあ、手伝います」


当然ながらこの展開を期待していた私は、遠慮気味に家に入る。


「嬉しいわ。昔はヒロミと一緒に料理作ったのよ」


そう。私はお母さんと一緒に料理をするのが大好きだった。

親子で一緒にする作業。お母さんがいつも優しく色々教えてくれたから。
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