二重世界
「あ、ちょっと、亮ちゃん!……しまったなあ。ヒロミの話には敏感になっちゃうわよね。気を付けないと」




「おばさんも感じたのか。片瀬の中にヒロミの存在を。ちっ、気のせいに決まってる!あいつは憎しみの対象なんだ!」




私は帰宅して、学校に行く準備をする。
しかし、あの後のお母さんと亮ちゃんの会話内容が気になり、上の空。


「亮ちゃん、私の事をお母さんに話したかなあ。だとしたら、お母さんに会いずらくなっちゃうな……」


私は自然と涙がこぼれた。お母さんと呼べなくてもいいから、これからもずっと会っていたい。

ただ普通に会話出来るだけでもいい。あの優しい笑顔を2度と失いたくない……。


「はあ……。ダメだ、また暗くなったら香織に心配かけるし。そうだ、警察に電話してみよう」


私は不在着信のあった番号に電話をかけた。折り返さなきゃという義務感よりも、今は気を紛らせたい想いの方が強かった。
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