二重世界
「本心をしゃべっちまうとは、間抜けな犯人だな」


「そうですね、はは……」


私は適当に相槌をうつ。本当の事を言っても信じてもらえないだろうし。


「しかし不思議な話だねえ。犯人は誰かに本心を言わされたんじゃないかと思ってしまうな」


「え?」


坪倉さんは、いきなり私の懐に言葉を投げ込んできた。


「ちなみに、君は藤瀬ヒロミの事故現場にいたそうだね?」


「は、はい」


この人の担当する事件は‘変な事件'ばかりだって……。痴漢の件は私を呼び出す理由!?


「証言によると、君が藤瀬ヒロミに耳元で囁いた途端、彼女が飛び出したという事だが。君は彼女に何を言ったんだ?」


もしかして私、疑われてるの?でも、確かに疑われても仕方ない。でもあれは、操作されてたのよ?


「あのときの事は、よく覚えてません……」


「つまり、誰かに操られていた、とでも言いたいのかな?」
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