二重世界
「まあ君は重要参考人になる。また話を聞かせてもらうよ」


「失礼します」


私はきっと疑われた。坪倉さんは、藤瀬ヒロミの事故死を殺人事件として見ている。

坪倉さんの担当する特殊事件として。一体この人はどこまで知っているんだろう。


「あ、ちなみに」


私が部屋を出かかった時、坪倉さんが声をかけてきた。


「‘二重世界'って聞いた事ないかい?」


「……え!?……あの、よくわかりません」


「そうか。気を付けて帰りなよ。またね」


私は部屋を足早に出て、警察署を後にした。


「先輩、踏み込み過ぎじゃないですか?もし片瀬がCRISのメンバーだったら……」


「いや、操られていたのは本当だろう。何かを隠しているのは確かだがな。おそらく片瀬は、自ら持つ異能によってヤツらの魔の手を逃れたんだろうな」


「じゃあ片瀬は被害者じゃないですか。なんであのまま帰したんです?彼女はまた命を狙われますよ!」


「あのコは正直過ぎる。おとり捜査には向かない。わかるか?」


「……なるほど。全く、いつも僕に重労働させるんですから」


「俺は頭を使う。お前は体を使う。任せたぞ。さて、しばらく止まっていた時計の針が、片瀬詩織によって動き出すかな……」
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