二重世界
「ごめん、つい……。でも、何で私の事を‘ヒロミ'って呼んだの?」


「いや……、偽名使わないとヤツら何してくるかわかんねえしな」


「完全に藤堂くんにビビッてたから大丈夫よ。そこまで考えなくても」


「‘藤堂くん'か……」


「え?何?」


一瞬亮ちゃんが沈んだ顔をしたように見えた。何を言ったのか聞こえなかったけど。


「い、いや。それよりお前、何かマイナーなキャラクターのキーホルダー見てたよな。あ、あれに思い出でもあんのかよ?」


亮ちゃん見てたんだ。
さっき私を‘ヒロミ'って呼んだ事と言い、少し気付きかけてるのかも……。



気付いて欲しい。



でも気付かれたら、私の存在が消えてしまうんだ。


「あのキャラクター、マイナーで珍しいな、て思って……」
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