『ヴァンパイア』短編・6ページ・完
こいつがなぜ全日制のこの学校にきたか。そもそもこいつは頭はだいぶん、悪いけれど、こう見えて運動神経は抜群なのだ。走り幅跳びでは50メートル位飛ぶし、走り高飛びでも10メートル位飛んでる。跳んでるっていうか飛んでる。それに車にひかれても死なないし、銃で撃たれても玉が銀のバレットでなければ大丈夫と言ってた。ちょっと最後のほうのは運動神経じゃないけれど、実際、この女、結構有名校からスポーツ推薦をもらっていたのだ。それなのにランクの低い、しかも全日制のこの学校をあえて名指して選んできたのは・・・ずばりっ!!この学校に好きな男がいるのだ。彼女のこの表情を見るからにそれは間違いないだろう

 しかし、それならばなおさら、放課後に幼なじみの俺なんかとずっと一緒にくだらない話をしている場合じゃない。

 授業が終わったらそいつのところへ行って、そいつと下校時間ぎりぎりまでおしゃべりをするべきなんだ。はっきりいってこいつはそんなに顔も悪くないし、いや、むしろ性格はがさつだし、頭は悪いし、素直じゃないし、乱暴だし、ゲーマーだし、八重歯が左右とも出てるけど、しかし顔だけはむしろ整っている。そう、こいつならばほとんどの男はいけるんじゃないか?

 まったく大事なところでシャイで行動力が鈍い。

「鈍い女だなっ!」

「!!!っ・・・あんたにだけは言われたくないわよっ!」

「???」

「どうして、どうしてあんたは私のことにそんなに興味をもってくれないの?どうして気がつかないのよ?」

 なんだよ。またバンパイアだと知らなかったことを蒸し返すつもりかよ。ちょっと面倒だなと思ったけれど、よく見ると真由子は俯いて本気で凹んでるように見えた。


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