女心とアキのソラ
すっ、と視線を上げる。

刺さるような視線を避け、二人の隙間を見るように、胸に息を送りこみ。
俺はこの呪文に全てを賭けるぜ!

会心の一撃を喰らわせる意気込みで口を開いた。

「男のコカン…」

噛んだ。

一番大事なところ噛んだ。

意を決したはずの視線がさまよう。
ポカーン顔の二人の女性が読みとれない表情でこちらを見ているのがチラチラと視界に入る。
やめて。見つめないで。気になるならせめて突っ込んで。
いや、股間に突っこむではなく…

なんて。
考える暇もなく。

俺は逃げた。

股間によってダメージを喰らった二人の女を置き去りにして、俺は逃げた。
そこだけはシナリオ通りだった。

カオスから全速力で逃げ、白昼堂々股間と言い放った俺の腕の中では男の沽券の文字が揺れている。

男の沽券って何だよ?

俺が今一番知りたいわ!



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