女心とアキのソラ
「ソラ君?」
「ラーメンがね」
「は?」
「その…ラーメンがあるのよ。いつも食べてるラーメンがね」
「…うん」
「で、たまに新しいラーメン屋が出来たよ、とか、ここ今流行ってるとか、聞いたりして、連れて行かれたりして」
「うん」
「でもやっぱり次の日にはいつも食べてるラーメン屋に行ってるんだよ」
「美味しいの?」
「んー。ちょうどいいんだよね。手ごろな価格で、具のバランスが良くて、熱すぎなくて…だからね」
ここでソラはアキの頭を撫でて。
「何かやっぱり、ちょうどいいのが傍にあるのが一番いいんだよね」
そしてまた無言になる。
ソラはアキの反応を気にして。
アキは頭の中でソラの言葉をくゆらせて。
「ソラ君」
「ん?」
そしてアキは
「そのラーメン、私も食べたい」
不得要領な返事をして手を握った。
男の沽券並みに不得要領な返事をしてソラの手を包んだ。
それで何となく二人はその事はどうでもよくなって、どちらからともなく睡魔の誘うがままに脳を休める。
明日からまた何の変哲もない日常に、お互いがお互いとして向かって行くために。
女心も男心も夫婦関係も、
秋の空みたいに変わるものですが。
とりあえず今、手を繋いで眠っている二人は
アキのソラで
ソラのアキで
ということで。
お後が宜しいようで。
《おしまい》