【企】$oldier File
翌朝、三人のB級兵士が派遣された。
俺が出発の命令を受けたのは一時間後。
彼女と俺の二人だ。
「どこだって?」
彼女は尋ねる。
俺はジープに給油していた。
「コルバノ、北の工業都市だ」
車庫全体が油臭い。
彼女は覚えがないようで、再び尋ねる。
「遠いの?」
「ジープで一時間」
「面倒くさい。近場がよかった」
彼女は顔をしかめた。
「装備は?」
「俺はこれだけだ」
俺は帯電グローブをポケットにねじ込む。
「そう」
彼女は無表情で頷く。
俺は彼女にトランクを投げた。
「お前が使ってた武器。中は触ってないよ」
彼女は両手で受け取ったトランクを、まじまじと眺める。
「…ああ、わたしだ」
彼女は納得したらしい。
「覚えていてくれてなによりだ」
中身は俺も知らない。
俺には、どうだっていいことだ。
車庫のシャッタは上がっていた。
ジープも問題はない。
滑らかにスピードを上げる。
アクセルを踏み込んで、一気に加速。
身体中の血が俺の手足を急かす。
早く戦場に向かいたいのかもしれない。
「サルバ」
「何?」
「多分、今、同じこと考えてる」
冗談っぽい口ぶりだ。
だけど多分、本気で言っている。
「殺したいの?」
「そうかも。いや、わかんないな。サルバは?」
「どうかな。仕事だからな」
俺は微笑む。
俺は誰かのために戦う訳ではなく、ましてや会社の為でも、国のためでもない。
殺人が仕事で、俺達はそれで賃金をもらって生活をしているにすぎない。
彼女も同じことだ。
「そのグローブ、何に使うの?」
彼女は俺のポケットにねじ込まれたグローブを指差した。
「俺の能力をサポートするんだ」
「ふうん、サルバは能力者なんだ?」
この世界では俺のような能力者は珍しくはない。
むしろA級の多くは能力者で、大抵傲慢だ。
彼女はA級だが能力は持っていない。
彼女が常に持っているのは運と勘と、M2カービンだ。
そこがいい。
ちっとも嫌みじゃないし、傲らない。
「俺は磁界と電流を操れる。その範囲なら何でもできるよ」
「便利?」
彼女はさほど興味なさげに尋ねる。
「さあ?どうかな?」
俺はアクセルをますます踏み込んだ。