【企】$oldier File
街は既に、血の臭いに包まれていた。
「あーあ、ひどいなこりゃ」
ジープは降りた。
街に足を踏み入れ、思わず手をあわせる。
彼女は足元に転がっているC級兵の、おそらくはコルバノの駐屯兵であったと思われる頭を蹴飛ばした。
「お前、そのうちバチがあたるぞ」
「いいよ。わたしもあんたもとっくに人殺しでしょう?」
俺はその頭は味方のもんだろうが、と、とりあえずため息をつく。
コルバノ駐屯のC級兵士は237名。
見る限りでは、おそらく全滅した。
「装甲型機動兵器2体、陸型機動兵器7体、あとは人間が800人弱」
一目、半壊の建物の連なる町並みと死体の山を見ただけで、相手方の軍事力を瞬時に判断する彼女に、俺は内心舌を巻く。『前線、北に上昇』
俺は情報収集部から送られてくる音声に耳を傾ける。
どうやら、前線は移動した。
情報が足りない。
むしろ全くない。
だから俺は、先に派遣された、三人のB級を探す。
2人は無惨な死骸に変わり果てていた。
1人はその亡骸の前にしゃがみ、手をあわせて黙祷を捧げている。
グシャリ―…
B級の彼が顔を上げれば、彼女は亡骸の頭を踏みつけていた。
彼はこぼれ落ちそうなほどに目を見開いて、彼女を見つめる。
「な、に…しているのですか」
彼は立ち上がる。
彼女に詰め寄るとジャケットの首もとを掴み上げた。
「貴方は情けというものを持っていないらっしゃらないのですか!!!」「この死体にその価値はない」
彼女は彼の腕を掴み、叩き落とした。
「…っ彼は、仲間なんですよ!!?この世界のために死んだのに価値がないわけないでしょう!!!」
彼はヒステリィな声を上げる。
「そういうことは全部片付けてから言うの」
ナナセは彼に拳銃を突き付けた。
「正義で着飾ったやつは嫌い」
躊躇いのない、爆音。
俺はそれをサイドから貫く。
雷光。
B級の頭を貫くことなく地面に横たわる。
弾丸。
「こんくらいでいいだろうが」
暫し睨み合っていた。
やがて、彼女は拳銃を下ろした。
「今回だけ」
俺はB級をジープに押し込んだ。
彼女は指差す。
「あっち。かなり遠いけど煙の匂いがする」
「了解っ」
俺はジープを走らせる。
全身の血が疼くのを止められないのだ。