【企】$oldier File
リチャード=カルヴァートに呼ばれた。
それほど広くない彼の支部長室はブラウンカラーで統一され、必要最低限の家具と整理された多量の書類から整然とした印象を受ける。
デスクの前に、女が一人立っている。
彼女は1ヶ月ぶりに帰ってきた。
もともと細い身体だったけど、また少し痩せたかもしれない。
「ナナセ=マーシャル」
彼は彼女のガラス玉のような瞳に臆することなく問いかけた。
「戦場に戻ってこい、これは命令だ」
彼女は彼が指し示した椅子に座ろうとはせず、微かに笑いを含んだ口調で言った。
「あんたの駒に、と?」
彼は諦めたのか、随分投げやりな返事を返した。
「だいぶ人聞きは悪いがな。君の好きなように考えてもらって構わん」
彼と彼女の間に、暫く冷たい沈黙が流れていたが、やがて彼女は小さく口を開いた。
「御意」
彼は立ち上がって、彼女に書類と、ピアスを渡した。
「これは?」
「最新型の通信機だ。ここで特注して作らせた。じきに他支部にも出回るだろう」
彼女はピアスを耳に取り付け、満足げに微笑む。
「軽いね。気に入った」
「それはよかった」
彼は、ようやくほったらかしだった俺に視線を移した。
「彼はサルバ=カーシュマ。君の相棒だ」
彼女は俺をジロリと見て、なんとも言えぬ顔で彼を見つめた。
「サルバ、部屋に連れていけ」
彼が冷たくいい放つので俺は困ったように笑う。
御意、と呟く。
俺は彼女についてくるよう促した。