最後のおくりもの

私が黙っていると、空を見上げていた彼が私のほうを向いて口を開いた。

「もう寒いし時間も遅いから、そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」

その言葉にハッと我に返った私はあわてて返事をした。

「あ、そうですね」

「気を付けてね」

「ありがとうございます」

お礼を言って頭を下げたあと後ろを向いて屋上から去ろうとしたが、どうしても彼が気になって仕方ないと思い、もう一度だけ彼のほうに振り返った。


また、空を見上げていた。


ここで別れたらもう会えない気がした。

そんなことを思った私は無意識のうちに言葉を発していた。

「…また会いにきていいですか?」


…なんてことを言ってしまったんだろう、凄い恥ずかしい。

言った後に恥ずかしさで私は顔を俯かせてしまった。


たぶん、いや、絶対に彼は驚いているだろう。

だって初対面の相手に『また会いにきていいですか?』なんて言われたんだから。

私はなかなか返事がない彼を恐る恐る顔を上げて見上げてみる。

案の定、彼は驚いて目を見開いていた。

でもすぐに小さく笑ってこう言った。

「こんな俺に会いにきてくれるなら、いつでも大歓迎だよ」

「あ、ありがとう!!」

私は嬉しくて嬉しくてつい大きな声を出してしまった。

ハッと思ったときにはもう遅くて、彼に笑われていた。

「はははっ、君って面白いね」

「お、面白くないですよ!!」

真っ赤になりながら反論する私をさらに笑う彼。

「ははっ」

「もう!!…あ、名前なんていうんですか?」

名前を聞いていなかったことに気が付いた私は彼に聞いてみた。

「一樹だよ」

「一樹君っていうんですか」

「君はいらないよ」

「いやいや、だって年上ですよね?」

「俺は今16だよ」

「えっ!?じゃ同い年だ!!」

「君も16なんだ」

「です。私はてっきり18歳くらいかと…」




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