最後のおくりもの
私は家から病院までの長い道のりを息をするのを忘れるくらい必死に走る。
「…一樹!!」
あともう少し…あの角を曲がればすぐ病院だ。
信号や車なんか気にしてる余裕はない。
角を曲がり病院に着くと、すぐに205号室に向かった。
205号室は3階なので、いつもならエレベーターを使っていたけど今はエレベーターを待ってる暇なんかない。
やむを得ず私は階段を選択し、3階まで向かった。
205号室の前まできて、ドアを開けようとドアの取っ手に手を掛けようとした時。
「一樹―――!!!」
一樹のお母さんの悲痛な
叫び声が私の耳に届いた。
ドアを開けると一樹の両親はベッドで泣き崩れていた。
私は一樹が死んだのだとすぐに理解した。
なぜか涙は出なかった。
私はそのまま入り口で立っていると、一樹のお母さんが私に気付いて泣きながら言った。
「一樹が最後に美奈ちゃんに伝えてって…『"約束の場所"へ行ってみて。渡せなかったものがあるから。』って…」