最後のおくりもの
その言葉で思い出したのは、一樹と2人でお互いの大切なものを埋めた"丘"だった。
あの時の会話が頭の中に流れ込む。
『いつか…俺の病気が治って、元気になったら2人で掘り返そうな』
『うん!!一樹の病気、絶対治るよ!!だからまたこの"丘"に来ようね』
『…うん、ありがとう』
そう言った一樹の笑った顔は嬉しそうな、でも悲しそうな、そんな顔だった。
…もしかしたら一樹は自分の病気が治らないことを知っていたのかもしれない。
なんであの時に気付いてあげなかったんだろう、と後悔が私の心を蝕む。
でも今はとにかく一樹のいう"丘"へ行かなくては。
「お母さん、ありがとうございます!!」
私は一樹のお母さんにお礼を言い頭を下げた後、踵を返してすぐに約束の場所へ向かって走った。