先生のバイク ~side先生~

「ピアノの・・・帰りです・・・。」

なんか、中村らしい答えだった。


よかった。

安心した。



中村は、困った顔をしていた。

「せっ、先生こそ、なんでここにいるの??」

「ん??俺??
 塾の帰り。水曜日は早く帰れるんだぁ・・・。」


嘘をついた。



中村の前で、女の話はしたくなかった。


俺は、ヘルメットをとりながら言う。


「バ・・・バイク・・・乗れるんですね・・・。」

中村が、驚いた顔で言う。


「知らなかった??いつも塾の駐輪場においてあるけど・・・。」

ちょっとショックだった。


中村は、俺のことなんにも知らないんだな・・・。

「あっ!!!
 塾長のだと・・・思って・・・ました。」

「それに・・・」

俺は、あのことを言おうとする。
「ん???」

「やっぱなんでもない・・・。」


やっぱ、覚えてないか。


あんな前の話だもんな。


俺だって最近思いだしたし・・・・・。
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